大阪 ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタント 郡山浩二 K2planning

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パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象が広がります

パートタイムやアルバイトとして働いている皆さん、平成28年(2016年)10月1日から厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入要件が、これまでの「週30時間以上労働」から広がることをご存じですか。社会保険に加入すると、将来の年金が増えたり、医療保険の給付が充実したりするなど、より手厚い保障を受けることができます。社会保険の拡大によるメリット対象となる方々についてご案内します。

 

INDEX

1.社会保険の何が変わるの?

~加入対象が「週20時間以上」働く方などに広がります

日本に住む20歳以上の方や、一定の条件を満たす条件で働く方は、公的年金制度(国民年金や厚生年金保険)と医療保険制度(健康保険など)に加入することになっています(コラム参照)。

このうち、企業や団体などに雇用されて働く職員など「被用者」を対象とする厚生年金保険や健康保険を「社会保険」といいます。
この社会保険の適用範囲が、平成28年10月1日から拡大されます。

具体的には、現在は、一般的に週30時間以上働く方が厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入の対象ですが、従業員が501人以上の企業や団体について、週20時間以上働く方などにも対象が広がります。
これにより、パートやアルバイトなど短時間で働く方の社会保険の適用範囲がさらに広がり、そうした方も社会保険のメリットを受けられるようになります。

社会保険チェックシート
~次に当てはまる方は、社会保険の新たな加入対象者である可能性があります

参考)厚生労働省「平成28年10月から厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がります!(社会保険の適用拡大)」

(コラム)公的年金制度の種類

公的年金には、次の2種類があり、日本国内に住む20歳以上の方や一定の要件を満たす条件で働く方に加入が義務づけられています。

なお、以前は公務員や私立学校教職員を対象とした「共済年金」がありましたが、平成27年(2015年)10月に厚生年金に統合されています。

保険制度加入対象
国民年金
(基礎年金)
日本国内に住む20歳以上60歳未満のすべての方 第1号保険者:自営業者、農業者、学生、フリーター、無職の方など。
第2号保険者:厚生年金保険の適用を受けている方。
第3号保険者:第2号被保険者の配偶者で20歳以上60歳未満の方。
ただし、年間収入が130万円以上で健康保険の扶養となれない方は第3号被保険者とはならず、第1号被保険者となります。
厚生年金保 厚生年金保険の適用を受ける事業所に勤務し、所定労働時間が「週30時間以上」の方。
※平成28年9月30日まで

厚生年金保険に加入している方は、全国民共通の「基礎年金」に加えて、報酬比例の「厚生年金」を受けることとなります。

参考)日本年金機構「公的年金の種類と加入する制度」

これまでは、社会保険が適用される事業所(※1)で一般的に週30時間以上で働く方が社会保険の加入対象でした。このため、パートやアルバイトなど短時間で働く方は、労働時間の要件を満たさなければ社会保険の加入対象になりませんでした。社会保険に加入できない場合は自分で国民年金国民健康保険に加入することになり、その場合、2章でご説明する社会保険のメリットは受けられません。

※1.厚生年金保険と健康保険は事業所単位で適用されます。国、地方公共団体若しくは法人の事業所又は一定の業態の事業所であって従業員が常時5人以上いる個人事業所は、法律により厚生年金保険と健康保険に加入することになっています。それ以外の事業所でも、従業員の半数以上が同意して事業主が申請し、厚生労働大臣の認可を受ければ厚生年金保険と健康保険に加入できます。

詳しくはこちら:
日本年金機構「厚生年金保険」>適用事業所と被保険者
全国健康保険協会「適用事業所とは?」

そこで、社会保険のメリットを受けられない短時間労働者にも社会保険の適用を拡大すること等を規定した、「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」(平成24年法律第62号)により、平成28年(2016年)10月1日から、社会保険の適用範囲が拡大されることになりました。

社会保険に加入すると、支払うべき保険料の半額を雇用する企業や団体が負担するという利点があります。また、老後に受け取れる年金額や障害がある状態になった場合の障害年金額が充実していたり、健康保険の給付が手厚かったりといった利点もあります(2章参照)。

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2.社会保険に加入するメリットは?

~将来もらえる年金が増えるほか、保険料の半分を会社が負担します

厚生年金保険・健康保険(社会保険)に加入するメリットには、大きく次の4つがあります。

(1)将来もらえる年金が増えます

厚生年金保険に加入すると、全国民共通の基礎年金に加えて、在職中の給料の額に基づいて計算される「報酬比例」の厚生年金を受け取ることができます。例えば、厚生年金保険に40年間加入し、毎月8千円の保険料を納めた場合、将来受け取る年金額は毎月1万9千円増えます(※2)。
※2.40年間の報酬が8万8千円であるなどの仮定を置いたモデルケースの場合。

(2)障害がある状態になった場合なども、より多くの年金が支給されます

厚生年金保険の加入期間中に、万一、障害がある状態になった場合、障害基礎年金のほかに障害厚生年金が支給されます。障害厚生年金には、月額約4万9千円の最低保障額が設けられています。また、障害基礎年金は障害等級1級または2級の場合に支給されますが、障害厚生年金は障害等級3級の場合も支給されます。
また、万一お亡くなりになった場合も、遺族に遺族基礎年金のほかに遺族厚生年金が支給されます。遺族基礎年金は18歳未満の子がいない場合は配偶者に支給されませんが、遺族厚生年金は18歳未満の子がいない場合も配偶者に支給されます。

(3)医療保険(健康保険)の給付も充実します

医療給付の内容は、各医療保険制度共通で、基本的に本人・家族で差はありませんが、一部の現金給付(傷病手当金、出産手当金)について、差があります。健康保険に加入していると、病気やけが、出産などで仕事を休まなければならない場合には、傷病手当金や出産手当金として、賃金の3分の2程度の給付を受け取ることができます。

(4)会社が保険料の半分を負担します

国民年金国民健康保険では被保険者本人が保険料を全額負担しますが、厚生年金保険や健康保険に加入した場合には、保険料の半分を会社が負担します。つまり、厚生年金保険では、自身が支払った保険料の2倍の額が支払われていることになり、それが給付につながります。

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3.どんな手続きが必要?

~厚生年金保険・健康保険の加入手続きは勤め先を通じて行います

このたびの適用拡大により新たに厚生年金保険や健康保険に加入する方は、基本的に、ご自身の勤め先の企業を通じて手続きを行うことになります。ただ、それまで加入していた国民健康保険や配偶者の健康保険の資格喪失などの手続は、別途ご自身で行う必要がありますのでご注意ください。

国民年金に加入している方】

厚生年金保険の加入手続きは勤め先の企業や団体を通じて行います。

【配偶者の健康保険に加入している方】

健康保険の加入手続きは、ご自身の勤め先の企業や団体を通して行いますが、配偶者の健康保険の資格喪失の届出を配偶者の勤め先を通じて行う必要があります。その旨を配偶者の勤め先に申し出てください。

国民健康保険に加入している方】

健康保険の加入手続きは勤め先の企業や団体を通じて行いますが、国民健康保険の資格喪失の届け出は自身で行う必要があります。具体的な手続きなど詳しくは、お住まいの市区町村にお問い合わせください。

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4.事業主の皆さんへ

~いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップに取組む事業主を支援する「キャリアアップ助成金」をご活用ください。

パートやアルバイトで働く方の中には、保険料負担を回避するため、年収が被扶養認定基準(年間収入130万円)を超えないよう、働く時間などを調整する傾向が見られます。そうした就業調整を防ぎ、社会保険の適用拡大を円滑に進める観点から、パートやアルバイトの方の賃金の引上げや、本人の希望を踏まえて働く時間を延ばすことを通じ、人材確保を図る意欲的な事業主に対して、キャリアアップ助成金による支援を実施しています。

【キャリアアップ助成金を活用した支援の内容】

(1)賃金の引上げを行う事業主への支援

  • 賃金テーブルを改定し、労働者の賃金を2%以上増額した場合に助成します。
    助成額 1事業所当たりの対象労働者数等に応じて5万円~300万円(大企業の助成額は3/4程度)

(2)労働時間延長を行う事業主への支援

  • 労働者の週所定労働時間を25時間未満から30時間以上に延長(※1)し、社会保険を適用した場合に助成します。
    助成額 労働者1人当たり20万円(大企業は15万円)(※2)

※1 平成28年10月以降は、労働者の週所定労働時間を5時間以上延長し、社会保険を適用した場合に助成(助成額は同額)
※2 平成28年10月以降、上記(1)の賃金の引上げとあわせ労働者の手取り収入が減少しない取組をした事業主に対しては、1~4時間延長でも助成
助成額
1時間以上延長:労働者1人当たり4万円(大企業は3万円)~4時間以上延長:労働者1人当たり16万円(大企業は12万円)
注)※1、2のいずれも、現時点における予定です。

詳しくは、最寄りの都道府県労働局またはハローワークへお問い合わせください。

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<取材協力:厚生労働省 文責:政府広報オンライン

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